おすそ分けの風
函館で、11月のこの時期としては
35年ぶりという量の雪が降り
ぐっと冷え込んだ夜。
わたしの大好きな熱めのお風呂がある
温泉で、体をしっかりと温めました。
温泉を出て、脱衣所の洗面台の前に座り
タオルで髪の毛を拭きながら、火照った体を
しばしクールダウン。
ここの温泉は、ドライヤーが
3分20円なので
お財布から出しておいた
10円玉を4枚
洗面台に積んでスタンバイ。
すると、2つ隣りのドライヤーを使っていた
見知らぬおばちゃんが、わたしに
「まだ残ってるから、良かったら使って〜〜」
とドライヤーをパスしてくれました。
ショートヘアのおばちゃんには
3分は、必要なかったようで
おすそ分けの暖かい風を貰いました。
わずか1分ほどの出来事でしたが
その風は、とてもとても暖かく
貰った風で、髪を乾かす自分を鏡で見ていたら
なんだか嬉しくて、可笑しくて
笑ってしまいました。
元の席に戻り、髪を乾かす続きを。
今度は、自分の20円で。
わたしの20円の風は
当たりまえに暖かい風でした。
都会暮らしで、失くしてきたこと。
何処かに置いてきた、心のゆとり。
はたと気づかされた
おすそ分けの風に。